きょうばかりは涙で送らせてください-。選手を愛し、愛された名参謀との最後の別れ。全員、ユニホーム姿で焼香に臨んだ猛虎ナインは祭壇の前で目を閉じ、タテジマ姿の島野氏の遺影に、心から感謝の言葉を贈った。
皆、目を赤くしていた。金本が言った。
「葬儀で人柄が分かるというけど…」
阪神だけでなく、他球団からも多くの球界関係者が参列した。
「(参列者の)メンツだけじゃなく、長く球界にいたというだけじゃなく、人柄を感じました」
場内を覆ったさみしさが、誰もが口を固く結び、うつむき悲しむ姿が、失ったものの大きさを物語っていた。
出棺の時-。日本代表・星野監督とともに、金本、矢野、下柳、赤星も加わって棺を運んだ。沿道の両側には約100人のファンも集まり“島野さん、ありがとう!”と声を張り上げる姿もあった。
甲子園に戻った後、南球団社長が明かした。闘病生活が続いた今季中も、島野氏は選手ロッカーを訪れ、選手にゲキを飛ばし続けていたことを。
「入院の合間も、球場に来てね。強烈な個性で、あの独特のなまりで、選手を激励して。こっちが気を使わなアカンのに…あの島野イズムを、皆で受け継がないと」
気持ちは選手も同じだ。クラブハウスから出てきたアニキは、さっぱりした表情に戻っていた。
「いつまでも引きずるわけにいかん。島野さんも“オレのことはもうええ”と言うやろしな」
こう話すアニキの額からは、汗が噴き出ていた。涙を流すだけで、練習を怠っていては、鬼軍曹に怒られる。そうですよね?
「あとは空から応援してもらいます」。あとは任してください。見ててください。